10度目の夏“鎮魂の花火”…上げ続ける父親の思い[2020/08/11 23:30]

東日本大震災の被災地で11日夜、一斉に花火が上がりました。亡くなった方を慰霊するためのものですが、コロナ禍のため、今年は無観客で行われました。

福島県南相馬市の上野敬幸さん(47)にとって、今年は10回目の花火になります。南相馬市・萱浜地区の風景を一瞬で変えた津波は、上野さんの両親、長女の永吏可ちゃん(当時8)、弟の倖太郎くん(当時3)を奪い去りました。永吏可ちゃんは見つかりましたが、倖太郎くんは行方不明となりました。上野さんは「最初は、捜索ばかりで考えなかったけど、ふとした時に『永吏可と倖太郎に花火を見せたいな』と思った」と話します。2011年の夏に打ち上がった花火は、亡くなった人と同じ数だけで、会場には涙しかありませんでした。

翌年からは、上野さんを中心に実行委員会が立ち上がり、“萱浜の花火”は、夏の風物詩として定着。そこは、悲しみよりも、たくさんの笑顔があふれる場所になりました。しかし、今年は、静けさに包まれました。
上野さんは「仕方がない。『誰が悪い、あれが悪い』と言っても何も始まらないので、自分ができることをやるだけ」と話します。午後7時半過ぎに打ちあがった花火。震災の年の9月に生まれた次女・倖吏生ちゃん(8)と空を見上げた上野さんは「会ったこともないし、話したこともないお兄ちゃんお姉ちゃんだけど、倖吏生の中では、ちゃんとその存在が常にある。倖吏生と一緒に見たのは、今回、初めてで(永吏可と倖太郎も)見てたんじゃない」と語りました。

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