反田恭平さん恩師「10年に一度の逸材」[2021/10/23 23:09]

モスクワ音楽院 ヴォスクレセンスキー教授(86)インタビュー
10月21日・モスクワ音楽院

反田さんについて−−
反田恭平さんは世界中の音楽家のなかでも傑出しています。
このような才能豊かな人が世にでるのは10年に一度のことでしょう。

ショパンコンクールでの名誉ある勝利を熱く祝福します。コンクールでの彼のすべての演奏を聴きました。まるでダイヤモンドのようのようにキラキラと輝いていました。本選のコンチェルトも素晴らしかった。とにかく彼の演奏は輝いていました

いまのコンクールは「才能」だけでは勝てません。
勝つためには完全に音楽を理解し、偉大な「名人(ヴィルトゥオーソ)」でなければならないのです。
ただ、私の意見では、恭平はコンクールで一番でした。

反田さんのピアノとは−−
日本音楽コンクールで優勝した時のラフマニノフは素晴らしかった。
私がとくに誇りに思っているのは、彼にモスクワ行きを提案したことです。
モスクワ音楽院の学生の水準は大変高く、真のライバルこそが彼を成長させると思ったのです。
彼の長所は、なによりも素晴らしい「気質」です。とても行動的でエネルギッシュです。彼の演奏は、観客を惹きこみます。居眠りの暇も与えません。
それは、ピアニストにとって大きな長所です。

彼は演奏をうまくコントロールできます。コントロールできるということは 完璧な演奏ができるということです。
彼は他の人がほとんどしないような曲の解釈をします。彼独自の解釈がですが、ショパンのスタイルは逸脱していないのです。
恭平は、まさにショパンそのものでした
自分の音楽のフレーズをよく聞き、作曲家の解釈を壊さない。これはまさにロシアの教えの良さなのです

すでにキャリアのある反田さんあえてコンクールに出場した思いとは−
人生とはそういうものです。
今の音楽家は受賞するかどうかで人生が左右されます。
恭平さんはもう勝ったのですからほかのコンクールに出場する必要はありません。自分のキャリアを傷つけるようなリスクを背負う必要はありません。
今の彼に大切なのはソロコンサートで演奏しオーケストラと共演することです。コンクールはキャリアの最初のステップに過ぎずその先へ行かなければなりません。
そして卓越したその力を世界に見せていくべきなのです。
私は確信しています。彼の未来が輝かしいものになるだろうと

いま、彼に伝えたいこと−
私は彼が私の教え子だったということを大いに誇りに思います。
私の教えが少しでも(入賞の)助けとなり、彼が教えを受け入れてくれたことがとても嬉しいです。
彼はとても熱心に練習をしました。多くの日本人のように、彼は大変な努力家です。
私はなによりもまず、彼が焦らないことを望みます。
なぜならピアニストのコンサート人生とは大変困難なものだから。
もし私に相談があれば、かつての「45番教室」でいつでも彼を歓迎します。

反田さんとの思い出−
彼との思い出は音楽にかかわることだけです
私たちは一緒に多くの曲を演奏しました。またさまざまな時代の様式や作曲家を理解するために、多くの作品を学びました
その思い出が残っています
彼はとても社交的で、自然で、目立ちたがり屋でありませんでした。
たまに気取るタイプの人もいますが、彼はとても自然で、それはとても良いことです
なぜなら自然体こそが天才のあるべき姿だから−−

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